タイタンの湖は地殻下の窒素の爆発で形成 NASA

タイタンの北半球の画像
Credit: NASA/JPL-Caltech/University of Arizona/University of Idaho

土星の衛星、つまり地球の月のような存在であるタイタンの表面には、湖や海が広がっていることを知っているだろうか。

地球上では、水は氷、水、水蒸気と状態を絶えず変えながら循環しているが、タイタンでも、メタンやエタンなどの炭化水素の循環が起こっている。これは、タイタンの表面温度が平均-180℃であるのに対し、メタンの融点と沸点がそれぞれ-182.5℃と-161.6℃、エタンの融点と沸点がそれぞれ-183℃と-89℃であることによる。つまり、タイタンには油の海や湖が広がっており、油が氷結や蒸発などを繰り返しながら循環している。

タイタンでのメタンやエタンの循環は、2004年から2017年まで土星系の観測を続けた土星探査機カッシーニによるレーダー探査と、2005年にタイタンに着陸した小型探査機ホイヘンスからのデータに基づく。

タイタンで発見されたメタンの湖とカルスト湖と類似した湖

カッシーニらが取得したデータは、現在でも解析が続いており、2019年4月には、タイタンの北側に深さ100m超のほぼメタンのみで満たされた湖を発見。西側には、切り立った丘や台地の上にある直径数十キロメートルの深い湖の存在を報告した。

メタンの湖の発見は、タイタンの南半球で発見されたほぼ同量のメタンとエタンで満たされた湖との比較から、科学者に驚くべきことと受け取られた。それは、地域によって循環する物質が異なることを示唆するためだ。

西側で発見された湖について、科学者は地球のカルスト湖と似たプロセスで形成されたと予想。それは、西側の湖の水深が深いことから、雨が単に溜まったのではなく、溶解しやすい岩石が侵食されるといったカルストのようなプロセスがあったと考えたからだ。

また、タイタンの北半球西部で発見された浅い湖に関する論文も示唆に富む。タイタンでは、29.5年周期で季節が移り変わると予想されていたが、この周期における冬期に湖が観測され、7年後の春分には消滅していたことが報告されたのだ。湖は、大気中に蒸発したり、地下に流れ込んだりしたと予想されており、この発見はタイタンの水循環の裏付けともなっている。

窒素の爆発によって形成されたタイタンの湖

タイタンの湖の画像
Credit: NASA/JPL-Caltech

一方、アメリカ航空宇宙局(NASA)は2019年9月9日、切り立った縁を持つ一部の湖は、温められた窒素の爆発によって形成されたとする理論を発表した。対象は直径数十キロメートル程度の小さな湖に限るとしているが、これは、地球のカルストと同様なプロセスによって形成されたとする既存の理論に反する。

この新しい理論では、タイタンの地殻には液体窒素が溜まったポケットが存在し、温められた窒素が爆発的に気化。クレーターが形成され、メタンの湖になったと説明する。これは、タイタンの北極近辺のいくつかの湖が、あまりにも急峻な縁を持っており、緩い縁となるカルスト湖では説明できないことから来ているという。

この理論は、タイタンがおよそ5~10億年前は、寒冷期にあったとする既存の説とも整合的だ。この寒冷期では、窒素は大気を支配し、窒素の雨が降り、タイタン表面は窒素で凍りついていた。そして、地殻で凍っていた窒素は、地殻表面よりも高温な地殻下へと循環し、液体窒素としてプールされていた。その後、温暖期になると、大気中の窒素は気体としてのみ存在できるようになるが、地殻下にプールされた液体窒素は残ったままだ。その窒素が、局所的な加温などによって急速に膨張、爆発的に広がることでクレーターが形成されるというのが、この理論のシナリオだ。

科学者は、今後もカッシーニが残したデータの精査・解析は続くと説明。それにより、タイタンも含めた土星系は、より解明されていくだろうと述べている。

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