Credit: EPFL
スイス連邦工科大学ローザンヌ校は2019年9月27日、触覚フィードバックを伝える柔軟な人工皮膚を開発したと発表した。この人工皮膚は、着用者の動きを即座に検知して、皮膚感覚をフィードバックする能力を持つという。
触覚とハプティクス
触覚は、視覚や聴覚と同じく、周囲をどのように知覚して、周囲にどんな影響を与えるかについて重要な役割を果たす。例えば、コップを持ち上げたことがない人は、能動的にコップを掴み、掴む力に応じた硬さや滑らかさを感じてみないと、どの程度の力で掴めば持ち上げられるのか分からない。
つまり、人間は、周囲への能動的な接触によって触覚が得た情報を下に、どのように行動するかを決定する。
一方、触覚に関係したハプティクスと呼ばれる技術がある。この技術では、利用者に力や振動、動きなどを与えて触覚を刺激し、情報を伝える。スマートフォンのバイブに使われていると言えば分かりやすいだろう。
最近では、仮想現実(VR)のリアリティを高度化させるものとして、フライトシミュレーターなどにも活用されている。
しかし、さらに高度なリアリティを得るためには、利用者の動作を検知し、その動作に対応した応答が必要だ。そのためには、検知するセンサーと振動等を与えるアクチュエータの両方を装着しなくてはならず、装着性や軽量性、柔軟性などに課題があった。
センサーとアクチュエータを統合した人工皮膚
そこで、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の研究者らは今回、センサーとアクチュエータの両方を統合した柔軟な人工皮膚を開発した。
この人工皮膚は、空気圧アクチュエータによって形成された層と、その上のセンサー層から構成。センサー層は、液体と固体のガリウム混合物で作られた柔軟な電極を含む。
アクチュエータは、空気に満たされた層を最大周波数100Hzで急速に膨張、収縮させて振動等を実現する。一方、センサーは皮膚の変形を連続的に測定。データをマイクロコントローラーに送信して、着用者の動きに応じて送信される感覚を調整する。
さらに、この人工皮膚は、手首に着用すればぴったりと形状を一致させ、圧力と振動を着用者に与えることが可能だ。また、その歪みセンサは皮膚の変形を継続的に測定。変形にあった触覚フィードバックをリアルタイムに生成できる。耐久性も高く、最大100万回、元の長さの4倍まで伸長させることが可能だ。
研究者らは、次のステップとして、体全体を覆う人工皮膚の開発を進めると説明。それにより、リハビリテーション医療やVR、人間とロボットのインターフェイスの強化まで、様々なことに応用できるとしている。
関連情報
参考リンク
- WIRED.jp:VRに「触覚」を導入すると、フライト訓練がもっとリアルになった
- CNET Japan:見て聞くだけじゃない--触って感じるVRグローブを試してみた
- EPFL: Artificial skin could help rehabilitation and enhance virtual reality
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