土壌の性質を変えてしまう気候変動――25年の降雨増加で土壌の水の吸収能が著しく低下

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ラトガース大学は2019年9月10日、降雨量の増加は土壌が水を吸収する能力を低下させる可能性があると発表した。これにより、地下水への供給、食料生産、水害に対する安全、生態系などに深刻な影響を与える可能性があるという。

より進行していく気候変動

近年、世界各地で、記録的な温度上昇や温度低下、大雨等、様々な気候変動が起こっている。その原因としては、温室効果ガスの増加による温暖化や森林の破壊など、様々なものが考えられる。そして、それは人類の活動が主要因との見方が大勢を占める。

地球温暖化を考える際、海洋の存在も無視できない。海洋は、地球全体で蓄積される熱エネルギーの約9割を吸収。また、人間が排出した二酸化炭素の約3割を吸収しているとされる。それにより、海水温も上昇しているため、近年の特異な暴風雨の発生なども温暖化が主因であると見られている。

あまり知られていないが、土壌の影響も無視できない。これまで森林は、土壌の微生物などが排出した二酸化炭素も含めて、人類が排出した二酸化炭素も吸収する、二酸化炭素の吸収源とされてきた。しかし、土壌から排出される二酸化炭素の量は、地球全体で年間約3600億トンと推定。人類が排出する二酸化炭素の約10倍にも相当する。そして、温度上昇は、土壌の微生物を増加させる可能性がある。そのため、温暖化は予想よりも早く進行し、さらなる気候変動の原因となる可能性がある。

土壌の水に対する特性がわずか25年で変化

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Credit: Rutgers Today

これらの気候変動、特に降雨量の増加による土壌の変化を調査するため、ラトガース大学などの研究者らは、草原に25年間、スプリンクラーで水を供給する実験を実施した。その結果、降雨量が35%増加することで、土壌の保水力はわずかに上昇するものの、水の浸透率が21~33%減少することを発見した。

研究者らは、浸透率の減少は、降雨量の増加によって草原の植物の根が肥大化し、孔隙(土壌中の隙間)の拡大を阻害したことが原因と推測している。また、水を加えたり取り除いたりしたときの、土壌の膨張と収縮のサイクルが減少したことも影響しているという。

研究者らは、降雨量の変化は土壌の性質を思いのほか急速に変えてしまうと説明。近年の気候変動によって、水と土壌の関わりが変化している世界の地域でも、土壌の性質が変化する可能性があるとしている。

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