記憶はどのようなメカニズムによって強化されるのか カリフォルニア工科大学

脳と記憶の画像

最新の研究では、生物の記憶は脳に蓄積されるのではなく、符号化されていると考えられている。そして、記憶するとは脳細胞のつながりが活性化することで、思い出すとは同じ脳細胞のつながりが再び活性化することでしかないという。つまり、去年行った旅行の風景や自分の大切な人のことなどは、いくら調べても脳内のどこにもないことを意味する。

記憶強化の神経生理学的メカニズム

一方、私達は記憶について、同一の事柄について経験すればするほど忘れにくく、思い出しやすくなることを経験的に知っている。この誰もが知っている記憶についての知見が、カリフォルニア工科大学の研究グループによって神経生理学的な観点から明らかにされた。 

研究グループは、マウスを用いた実験により、強固な記憶は同期して発火する複数のニューロンの集合体によって符号化されていることを発見した。そして、そのニューロンの集合体は、記憶維持のための冗長性を持っていることが分かった。 

実験では、様々なシンボルをマークした直線状の囲いを用意し、その両端に砂糖水を配置。マウスを囲いの中に放し、探索させながら、マウスのニューロンの活動を測定した。すると、シンボルを目にしたとき、マウスは単一のニューロンを活性化させた。これを何度も行ったところ、マウスは砂糖水の位置を記憶。さらに、シンボルを目にしたときに多くのニューロンを同期して活性化させた。 

次に、記憶がどのように消失するかを調べるため、最大20日間マウスを囲いから離した。その後マウスを囲いに戻すと、マウスは囲いの中の情報をすぐに思い出していた。また、そのときのニューロンの活性化を分析したところ、一部の異なった活動を示したニューロンを除き、20日間のブレーク前の活性化と同一であることを確認した。これは、ある記憶として符号化されているニューロンの一部が不活性、または損傷していても、強固な記憶の冗長性から、その記憶は想起できることを示す。 

この発見は、ニューロン間の接続強化が記憶を強固にするという従来の理論とは異なる。そして、記憶を符号化するニューロンの数を増やすことで、記憶がより長く維持できることを意味している。 

研究グループによると、この研究は、脳卒中やアルツハイマー病などを原因とする、脳細胞の損傷による記憶への影響を理解する上で助けになるという。また、記憶を符号化するニューロンの数を増やすことができれば、記憶の喪失を防ぐ助けになるとしている。

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