シャチでも祖母の支援によって孫の生存確率が向上――閉経の存在が種の保存を促進

72歳のシャチの画像
Credit: Center for Whale Research

閉経は、月経が停止し、子供が産めなくなる状態を言う。人間では、およそ50歳位で訪れる状態だが、シャチなどの一部のクジラでも閉経がある。しかし、なぜ閉経が存在するのか、また閉経は進化上何らかのメリットがあるのかなど、閉経の存在には謎が多い。

この閉経の疑問に一端の答えを与える研究結果が2019年12月9日、イギリスのヨーク大学によって報告された。研究チームは、回遊せず、北西太平洋沿岸で、複数の家族グループと共に居住するシャチの2つの個体群を調査。36年間にわたるデータを分析したところ、閉経後のシャチが孫世代の幼獣の生存可能性を高めていることを発見した。また、祖母の孫への影響は、食物が不足している時期でより顕著だったという。

この理由について、研究チームは次のように語っている。居住型のシャチでは、子は母親と生涯一緒に暮らすが、オスのシャチはメスよりも寿命が短く、通常は30年も生き延びることはできない。一方、メスのシャチは、30〜40代で生殖を停止するが、人間と同様に閉経後何十年も生きることが可能だ。そのため、閉経したシャチは、群れの中で最も年齢が高く、最も経験を積んだ個体と言える。その上、自らの子を世話する必要もないことから、孫の世代の幼獣を手厚く支援できるのだ。

この結果は、子を産み続けるよりも、孫の世代に投資した方が種の保存に有利であることを示す。ただし、これが当てはまるのは、閉経後という高齢の個体が群れに貢献できる、生存に知識や経験が重要で、かつ多世代家族を築く種に限られるだろう。

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