脳の信号を読み取り患者が感じる痛みを検出 MITなど

脳機能の画像化の画像
Credit: Massachusetts Institute of Technology

痛みをコントロールすることは、医療従事者にとって長年の課題だ。それは、病院を訪れる人のほとんどが、何らかの苦痛を理由にしていることからも理解できる。

一方、「なぜ痛みが起きるのか」「痛みはどのように脳に伝えられ、認識されるのか」といった痛みのメカニズムは、分子生物学や脳科学の発展により、大部分が解明されている。

しかし現状、痛みへの対処は、患者自身の報告から痛みのレベルを推測し、薬剤で痛みを抑えるという手段が大部分を占める。そのため、患者が鎮痛剤に依存するリスクがあったり、鎮痛剤の過小投与から慢性疼痛や合併症を引き起こしたりする可能性があった。さらに言えば、子供や認知症の高齢者、術中の患者らが感じている痛みを理解することは難しかった。

携帯型のデバイスで脳活動を計測し、痛みのレベルを測定

この痛みの問題に対応するため、マサチューセッツ工科大学(MIT)などの研究者らは、携帯型脳神経画像化デバイスからの脳活動を分析して痛みのレベルを測定するシステムを開発した。

開発にあたり、研究者らは、脳活動の測定に近赤外脳機能計測法(fNIRS)を採用。脳活動の分析には、新たに開発した機械学習技術を適用した。

fNIRSでは、本来は頭部全体に設置するセンサーを、額周辺の数個の設置だけにとどめた。これは、痛みの情報は全て前頭前野で統合されるため、前頭前野の観測だけで十分だと考えたからだ。

また、機械学習では、被験者に対し実際に痛みを与えながら脳活動を測定。疼痛のモデルを生成した。このとき、被験者全体の平均的な疼痛モデルだけでなく、年齢や性別などで分けたサブモデルも生成した。それは、年齢や性別などで痛みの反応が異なる場合、全体のモデルだけでは精度が低下する可能性があるからだ。その結果、この疼痛モデルは、患者が痛みを感じているか否かを約87%の精度で検出できるまでとなった。

研究者らは、今回開発したシステムにより、意識のない患者やコミュニケーションが困難な患者の痛みの診断・治療が可能になると説明。それにより、手術後に発生する慢性痛などのリスクを減らせると述べている。

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